ロンドンで知り合ったイタリア人の男友達に、すごくモテる男の子がいた。
結構仲が良かったけど、たぶん2歳くらい年上。
話すことが多すぎて、年齢なんて気にならなかった。
どれくらいモテるかっていうと、
パーティでイギリス人の女の子からいきなりキスされちゃうくらい。
そういう現場を、私は何度か見た。
美男子ではなかったけど、
女性を楽しませるのが心から好きなようだった。
以前、彼と私を含む3人の女子、合計4人でマーケットに遊びに行った。
みんなでぶらぶら歩いていたら、
彼が、売れ残ってちょっと安くなった花束を買って、
私たち女ひとりひとりに1本ずつくれた。
余った花は、自分の胸元にさしていた。
書き起こしてみると、すごくキザだけど
全然いやらしくもなくて、むしろウケ狙いでやってるような感じだった。
こんなことする男性がこの世にいるんだ、って感動しちゃった。
ある金曜日の夜、
「何してる?」ってテキストが来て、
「みんなでクラブにいるよ」って返したら、
「行ってもいい?」って言うから、待ってた。
「明日は何するの?」と聞かれたから、
「ハイゲート駅にある、ハイゲート墓地に行くよ。
マルクスの墓があって、60年代に黒魔術が流行ったときは墓荒らしが大量に出たんだって」
って言ったら、
「一緒に行きたい」って返ってきた。
そのときの彼の目は、いつもの友達の目じゃなくて、“女”を見る目だった。
そして、なんとなく告白を匂わせるようなことを言った。
「君には好きな人がいるって、アンドレアが言ってた。
しかも、僕の知ってる人だって」
いつも陽気な彼が、少し怯えているようにも見えた。
彼が私を好きだなんて考えたことなかったから、私は戸惑った。
それに、クラブの爆音の中で、本当にそんなことを言ってるのかもわからなかった。
なんのこと?って顔をしていたら、
「また明日、この話の続きをしよう」
って言われた。
告白されるのかな?って思った。
当時は別に好きな人がいたけど、こいつに鞍替えしてもいいかな、って思った。
次の日、ロゼワインを持ってハイゲート墓地に行った。
念のため、エロいパンティーも穿いていった。
パンティーの色はあえて書かない。
マルクスの墓を見に行ったからって、赤だと思わないでね。
だけど、告白はされなかった。
話の続きをされることもなかった。
キスされるような雰囲気にも、ならなかった。
ちょっとヤれそうな女の顔してみたんだけどな。
NASAは月に着陸してないよ。
本当は、墓荒らしにボコボコにされた土地で撮影されただけ。
人面岩も映ってたけど、あれ、私の怨念。
ロンドンで撮影されたハリウッド映画なのよ。
イギリスだから、爆発なし。
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