大学2年のとき、中学の同級生の訃報メールが届いた。
あんなに生命力があった子が、どうして?
悪い冗談かと思って、何人かに電話をかけた。けれど、どうやら本当に亡くなってしまったらしい。
夏だった。
お葬式場に着いた瞬間、涙が止まらなかった。
でも泣いていたのは、私だけだった。
まわりの19〜20歳の子たちは、
「摂食障害だったんだって。ベッドで寝てると思ったら、息してなかったらしい」
「親が悪いよね」
と、大人みたいな顔でご両親を批判していた。
あのときは本当に悲しかった。
けれど大人になった今、思ってしまう。
——カルマだったのかもしれない、と。
彼女は、とても卑しい子だった。
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中学を卒業しても、定期的に遊んでいた。
高校時代、ケーキ屋さんに行ったときのことをよく覚えている。
彼女は「ひとくちちょうだい」と言って、私のケーキにフォークを伸ばし、
大きなかけらをもぎとった。
私も同じようにやり返すと、
「取りすぎ!ケーキ崩れるじゃん!」と逆ギレした。
大学になって、料理教室に一緒に通ったことがある。
私は大きなシナモンロールを4つ、彼女はマカロンを20個以上焼いた。
「シナモンロール1個と、マカロン1個、交換しよ」
そう言われたが、断った。
終電が近かったのに、彼女はのんびり歩いていた。
私は黙って、ひとりで駅まで走った。
その夜、彼女からたくさんの文句メールが届いた。
でも私は、
「アスペ乙」
とだけ返し、それきり返信をやめた。
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彼女は、ドーナツを配っている店を見つけると、
「並ぶだけ並んで、ドーナツ貰ったら逃げよう。」
と提案してきた。
男性の自慰行為を見せられるバイトをしていた。
出会い系で、男に食べたいレストランに連れていってもらい、
食後に「お父さんが迎えに来るから」と立ち去っていた。
いつも「どうすれば自分が得するか」しか考えていなかった。
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彼女には、憧れのブロガーがいた。
その子みたいに、かわいくなりたかったんだと思う。
服もメイクも真似していた。
「高学歴の彼氏が欲しい」などと話していた。
中学時代は、先生や友達に平気で傷つけることを言っていた。
仲の良かった私でさえ、一度ひどい裏切りをされた。
交換はいつだって不平等だった。
奪い、騙し、すり替え、そして笑っていた。
ある日、彼女は摂食障害で亡くなった。
けれどある日、彼女はこう言った。
「この前、ハイスペ男子に漫画喫茶に呼ばれてさ、口で抜かされて終わりだった」
なんとも言えない表情だった。
私は苦しくて、何も言えなかった。
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どれだけ食べても、満たされない人がいる。
私はそれを、餓鬼道と呼んでしまった。
彼女が地獄に落ちていないといいな、とは思う。
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