2025/07/24

女暴力教室 ひとくちちょうだい

私の通っていた女子校は、古風な校風だった。

お昼の食事は、原則としてお弁当。

だけど私は、よくカップラーメンを持っていった。


机をくっつけて、7人くらいでご飯を食べていた。

みんな母親の気配が詰まったお弁当を開く。

私は一人、お湯を注ぎ、「さて」とカップ麺に手を伸ばした。


「おいしそう」「いいなあ」

犬がおやつを見るような目。

つい「ひとくちいる?」と言ってしまった。


すると、5人くらいが「私も」「私も」と手を出してきた。

最初にひとりにあげた手前、ダメとは言えず、

私のカップ麺は、女たちの口元を順に回っていった。


その時間が、とても長く感じた。

じっと待つしかない。手持ち無沙汰のまま、私の麺は冷めていく。


私は、本当に仲のいい子となら食べ物の共有も気にしない。

でも、顔見知り程度の子たちに順番に食べられるのは、正直、嫌だった。

それに、カップ麺なんて、5人に配ったらもうほとんど残らない。


ようやく戻ってきたカップ麺は、ぬるくて、スープは薄まり、麺は少なかった。

ひとくちあげただけだけど、食べた気がしなかった。


だけど1人だけ、返してくれた子がいた。

「もらったから、私のお弁当食べて」と。

断ったが、押しつけられた。


シャケフレークが乗ったごはんは、他人の家庭の味と雑菌の味がした。

おいしくなかった。でも、返すという心だけは、うれしかった。


そしてもう一人、唯一「欲しい」と言わなかったのがTちゃんだった。

彼女は、自分の大きな家でパジャマパーティを開くような子。

みんなにお土産を配るような子。

私は呼ばれたことがなかったけれど、

その日、彼女が「いらない」と言ったのは、遠慮でも、プライドでもなく、

思いやりだったんじゃないかと思う。


ひとくちちょうだい。

時にそれは、暴力になる。

私も食いしん坊だからわかる。

でも、“ひとくち”は、“信頼”とセットじゃなきゃいけない。

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