夢を見た。映画みたいな夢。
北野ブルーみたいな暗い映像だった。
夢の中で、私は家を追われた未成年だった。
理由はわからない。ただ、どうしようもなく悲しくて、パジャマで夜の道を歩いていた。ガラケーで同い年の彼氏に「会いたい」と打った。返信はこなかった。
暗い道を、とぼとぼ歩く。
彼を見かけた。青ざめた顔で車を運転していた。車に近づくと、彼は降りてきて、「お母さんが連れ子の弟を殺しちゃった」と言った。
私は泣いた。
なんて酷いことをするの、と。
そのときナレーションが流れた。
「この女の子は、自分のことで泣けない。人のことでしか涙が出ない。」
そこで目が覚めた。
起きた瞬間、ものすごく悲しくなった。
現実では、彼は返信をしていたし、私は家も追われていない。それでも、胸の奥がぐしゃっとなった。
私はよく、天真爛漫だと言われる。
30代になってもそう言われる。
それは褒め言葉なのか、未熟の宣告なのか、いまだによくわからない。
でも夢の中の私は、暗い道を歩いていた。
本当は、自分のことで泣けなかったのかもしれない。
優先順位の話をしても、倫理観を語っても、ロマンを分析しても、最後に残るのは「安心できる場所がほしい」という、どうしようもなく幼い願いだった。
それを口にすると、強さが剥がれ落ちてしまいそうで、いつも黙ってきた。
お母さんとずっと一緒にいたいと思う。でも一緒にいると消耗する。布団の中で丸くなっているときだけ、少し無防備になれる。
もしかしたら、完全に丸くなれる場所なんて、もうどこにもないのかもしれない。
そう思ったら、涙が止まらなかった。
苦しくなるくらい泣いた。
でも、泣いたら寂しさはなくなった。
夢のナレーションは間違っていた。
私は、自分のことで泣ける。