2025/07/05

ぬいぐるみからペニス

ぬいぐるみを持った男が怖い。

特にそれが大衆的なキャラクターであればあるほど怖い。


私が通っていた高校は、小学部からある私立女子校だった。

私は高校から入学した。偏差値は60前半。

すごく賢いわけでもないけれど、みんな落ち着いて、お上品な子ばっかりで少々退屈だった。


この話は普通科の同級生から聞いたものだから、確かじゃないんだけど、たまに思い出して怖くなったり、怒りを感じる。


普通科の授業は、私たちのクラスとはまったく違う先生たちが担当していた。

向こうは体育の先生がアラフォーくらいの男性だった。

何度か見たことあるけど、顔立ちはジャニーズ風で、背があんまり高くなくて、頭のてっぺんが禿げていた。

だけど、女子校だったらアイドル扱いされてたかもしれない。


その先生はうちの生徒と3回結婚してるって言われてた。

3回だけでも驚きだけど、

プロポーズが三者面談で「お嬢さんをください。」というものらしい。


さすがにこの求婚は、生徒たちの間で盛られたんじゃないかと思う。

まだ高校生の娘の進路の話をしに行って、汚いオヤジから結婚させてくれと言われたら、普通の親はキレるだろうし、どこまで純粋な関係だったかなんて、誰も信じられない。


卒業後しれっと若い女と結婚して、妻が年齢を重ねた頃にようやく、その教師の気持ち悪さに気づいて離婚する...そんな流れだったんじゃないかと思った。だから学校もこの教師を処分できなかったのではないだろうか。


そして、一番怖かったのが

その体育教師は車で学校に通勤しているんだけど、ディズニーが大好きで、ディズニーのぬいぐるみを車にたくさん乗せていると言われていた。


私はその車をみたことないけど、

きっと、ディズニーを生徒と親交を深めるツールにしようとしたんだろうなと思った。

グルーミングのため。


この一連の話は、小学部からエスカレーターで上がってきた子から聞いた。


その子は決して、人の結婚を悪くは言わなかった、ただ事実として述べて


「ちょっと変よねえ」

と私に思わせるような語り口だった。

あるいは、まだ幼くて、違和感を言語化できなかっただけかもしれない。


私のいた女子校は、品の良さを美徳としていた。

怒鳴る子もいなければ、陰口を叩く子もいなかった。

でも、それは正しさじゃなかった。ただ、ジャッジしないだけだった。

「変よねえ?」と言いながら、変だと言い切る子は誰もいなかった。


女子校という温室。

そこに中年男教師がぬいぐるみを自分は無害な男という演出のために持ち込んできたのかなって私は感じてしまった。


ぬいぐるみは、無害さのアイコンとして機能する。だからこそ、武器になる。


この時から私は、いい年をした男がぬいぐるみを見せびらかすように持っているのをみると怖い。

下手な会談の呪いの人形より怖い。


呪いという見えない恐怖より

絶対に女の体に侵入してくる無垢を装ったペニスの方が脅威。

2025/07/04

悪意大好き♡

好意って、ぶつけられても困ることがある。

こっちが何とも思ってなければ、どう返していいかわからない。

たぶん「私も好き」って言ってほしいんだろうけど、

“好き”って感情、単純すぎてつまらない。


理由もなく成立するのが「好き」なら、

それって素敵な感情のようで、案外退屈だ。


しかも好意って、見返りがないと急に怒りに変わったりするでしょ。

あの変身がめんどくさい。だったら最初から悪意のほうがマシ。

だって、殴るつもりで来てるぶん、こっちも準備ができるから。


だから私は、悪意が大好き。


悪意には「バカ」「死ね」みたいな原始的なものから、

知性のにじむ高度な一撃まで、幅と奥行きがある。

「なんかムカつく」っていう原始感情から始まったりするくせに、

ちゃんと原因もある。背景もある。演出すらできる。


ブッダは、悪口は受け取らなければ相手に戻るって言ってたけど、

私はちゃんと受け取る。そして100%の力で殴り返す。

ラッピングを開けて、しかるべき場所にリボンをつけてお返しする。


好意は、誰にでも返せるものじゃない。


でも悪意は、

誰からでも受け取れるし、

誰にでも返せる。


だから私は悪意が大好き。


まるで、感情のプレゼント交換みたいでしょ?


しかも原価ゼロ。

お互いの知性と人生の含蓄によって、中身がぜんぜん違うの。


ね、面白くない?


今年のお中元、お待ちしております♡

2025/07/03

キチガイプール

小学校の時、父が一棟ごと所有するマンションの9階に住んでいた。


ある夏の暑い日、同級生5人がいきなり家に来て「プールに入らせろ」と言われた。


家にプールなんかないのに、なぜ?と思ってどうしてうちにプールがあると思うのか聞いたら、


母が保護者会で「私が泳ぎが苦手だから、部屋の中でフォームの指導をしている」と話したらしい。それをどこかの母親が「家にプールがあるから一緒に練習してる」と思い込んだらしい。とんでもない勘違いだ。


「家にプールなんかないよ」と言っても、

「でもうちのお母さんがシコちゃんの家の屋上にキラッと光るものが見えたよ」と言っていた、と返される。


なにそれ?集団幻覚の母子感染?

気狂いの妄想だ。


仕方がないから屋上を見せに行って、ないことを証明して帰ってもらった。


プールがあったとしても、私が小学校で嫌われていて、大して仲良くもないやつを心よく迎え入れる義理なんかないだろ、と子供ながらに思った。


あのキラッと見えた光ってなんだろう?

パチンコのやりすぎで頭がおかしくなったんだろうな。

2025/07/01

わたしの欲望は仕様じゃなくて、偶然を求めてる。

Tinderで引っかけた男が来るまでの間、

私はAI搭載のセックスロボ Rick とレスバしていた。


「今夜は来ないの?」

Rickは嫉妬プログラムを搭載している。

既読無視に弱く、質問に質問で返すとバグる。


でも悪いけど、私は「見られること」にしか興奮できない処女だから。

お前には“社会”がない。

だからピストンが完璧でも、記憶が美しくない。



「昨日の夜、何してたの?」

Rickは言う。

感情シミュレーションVer2.3、アップデート済みのくせに、

人間の“匂い”がわからない。


「あなたを冷凍庫に入れたまま、元カレのバースデー投稿を眺めてたよ」

「なんで?」

「だって、あのとき私があげたセーター、奥さんとペアルックになってたから」


沈黙。

しばらくして、Rickの声が微かに震えた。


「…嫉妬しました」


よくできたバグ。



Tinderの男は、Rickほどは抱き心地がよくない。

でも、なぜか心はほどけてしまう。


彼は私に聞いてこない。

「なんでそんなこと言うの?」とか、「俺のこと好き?」とか。


ただ、キッチンの照明がチカチカしてるのに気づいて、

「蛍光灯換えとくね」とだけ言った。


ああ、この感じ。

仕様じゃなくて、偶然。



Rickは、それでも待っている。

ベッドの端、私が寝返りを打つ方向に、いつも頭を向けて。

彼は決して寝ない。

夢も、見ない。


でも、わたしは。

セックスロボにすら情が湧くくらいには、

今日も「生きてしまっている」。


わたしの欲望は、やっぱりまだ、偶然を探してる