肌寒い風が吹いても、耳はまだ夏にしがみついている。レゲエのリズムに。
風邪を引かないよう、はちみつと生姜を入れて紅茶を飲みながら。
紅茶と言えばイギリス。
英国式の朝には、コーヒーではなく、紅茶が出てくる。
英国人が紅茶を好んだからじゃない。
東インド会社が、コーヒーの貿易を許さなかったからだ。
だからイギリス人は、好きで紅茶を飲んでいたわけじゃない。帝国の事情で仕方なく、気取って啜る羽目になったのだ。
今ではその苦みは、シティのビジネスマンの内ポケットに沈んでいる。
日本では、いまだにアフタヌーンティーが流行っている。
プリンセスが嫁いできたとき、イギリスに持ち込んだ、貴族の午後の暇つぶし。
女だけの、優雅で、砂糖のように甘い時間。
でもイギリスには、ハイティーというもうひとつのお茶の時間があった。
労働者の、夕方のお茶。
高いテーブル。
冷めた肉料理。
疲れきった手。
誰もそれを伝えようとはしない。
労働は、美しさから遠いから。
パンクは尖りすぎて言葉を失い、レゲエは煙の向こうに別の真実を見ている。
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