2025/11/30

チンポジ(チンポと政治)

私にはペニスがない。

それはただの解剖学の話じゃなくて、

子供の頃からずっと感じていた“ある種の敗北”だ。


父や兄が立って小便する姿は、

なぜか自由と権力の象徴に見えた。

気軽にできて、誇らしげで、

世界から特権だけ抜き取ってきたみたいな後ろ姿。


私は夜の風呂場で一度だけ練習した。

足を開き、角度を探し、

水鉄砲みたいに飛ばしてみたかった。


でも、飛ばせなかった。

あの日初めて、

私は“女であること”の負け方を知った。


大人になっても、両親はくだらないことで喧嘩している。

父は硬い米が好きで、母は柔らかい米が好きらしい。

母は「硬い米が好きなんて貧乏くさいねえ。備蓄米でも食べれば?」

と、いつもの意地悪な声で言った。


リビングに近づくと、

米の炊き方で戦争みたいに言い争っていた。


私はすかさず口を挟んだ。

「やらけえとかかてえとか、チンポの話?」

と、おどけて。


娘にクソくだらないことを言われて、

二人とも一瞬でどうでもよくなったらしい。

喧嘩はおさまった。


私にはペニスはないけれど、

今日もチンポで、

家庭にちょっとやわらかい政治をやらせてもらってます。


——— ©️DSH / 2025

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