2025/08/09

オカルト特集No.7| 左近川に現れた三角列隊で泳ぐ変な魚たち

子供の頃、私は見てはいけないものを見た気がしている。

それは「幻覚」ではなかったと思いたいし、母もそう言ってくれた。

でも、いまだに正体はわからない。


小学生のとき、葛西あたりにある左近川という川沿いを父と2人で歩いていた。

その日以外にも数回行ったことがあったが、釣りをしている大人もいたりするが、いわゆる「綺麗な川」ではなかった。

岩場にはザリガニ、橋の下にはフナムシ。海が近いためか、どこか湿った生気が漂っていた。


ある日、川を覗いた私は、それを見つけた。

黄色と黒の縞模様を持つ、見知らぬ魚の群れ。


サイズは小魚程度。

しかし、泳ぎ方が奇妙だった。群れは一匹の魚を先頭に、綺麗な三角形を描いていた。

列の乱れもなく、ぬるり、すいすいと、まるで軍隊のように水面を滑っていく。

質感は魚というより、両生類に近かった。ぬめりのある皮膚。

サメのような背びれもなく、金魚のように体をくねらせながら進んでいた。

だが、色が異様だった。

工事現場のバリケードのような黄色と黒の警戒色。

自然の中で見るには、あまりにも不自然で、毒々しくて、美しかった。


私は、父を呼ぼうとした。父は魚に詳しかったし、「見て」と言えば何か言ってくれると思った。

でも、その一瞬の間に――すべての魚が消えた。


まるで、こっちが声をかけるのを待っていたみたいだった。

こっちを見ていたのかもしれない、と今になって思う。

でもあのとき、私はただ川を見ていただけなのだ。

観察していたつもりが、観察されていたのかもしれない。


あとから父に話しても、「光の加減じゃない?」と笑っていた。

けれど、曇り空だった。寒い季節で、私は長袖にタイツを履いていた。

夏ではない。陽炎も光も揺れていなかった。


インターネットで調べても、あの形状も、色も、群れ方も一致する魚は見つからない。

だから私は、もしかして**UMA(未確認生物)**だったのかと半ば冗談交じりに考えるようになった。

それでも絵に描いたこともあるくらい、鮮明に覚えている。

なぜか怖かった。

見た目の毒々しさだけじゃなく、異様な気配を感じた気がした。


今思うと、子供の特有の幻覚?とも思う。


私がこの変な魚を見たのは、小学校の低学年の頃だったと思う。

たしかに川をのぞきこんだのは自分の意思だったけれど、あの「列」は、どう考えても私の想像の外側にあった。

黄色と黒の毒々しい色の小さな魚たちが、なぜか“先頭”を決めて、きれいな三角形を保ちながらすいすいと泳いでいく。

それはまるで、軍隊か、どこか異世界のルールで動いている生き物のようだった。

私はピンクとリボンが好きな子どもだったし、あの列隊は私の“おとぎ話”のなかにはいなかった。

それは“夢の延長”ではなく、“現実の裂け目”から漏れた、誰かの世界だったのかもしれない。


UMAってネッシーとかビッグフットとか大きな生物が多いけど、もしかして、意外と地味なものもいるのかもしれない。


誰か、同じようなものを見た人はいないだろうか。

川で、黄色と黒の魚のような生き物を。

三角列隊で泳ぐ、不自然な美しさを。

私はずっと、この記憶に名前をつけられずにいる。

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