昔、仲の良かった女の子は、いつも割り勘で男性と付き合っていた。
彼女は「高学歴低収入の男性が好き」と自称していた。
払いたくても払えない男性と関わることが多かったんだと思う。
たしかに、貧乏で頭のいい男性は、高収入でまともな人よりユーモアがある場合がある。
経済力がないぶん、そういう方向に進化したのかもしれない。
でも、彼女があえてそういう男性を選ぶのは、
「理解者のポジション」にいたい、という欲望が透けて見えた。
彼女は安定した企業に勤めていた。
その会社を選んだ理由も、大学卒業の頃に好きだった男性が芸人で、
「自分が支えられるかもしれないと思ったから」だと言っていた。
最後に入れ込んでいた男性には、自分の貯金が200万円あることを話したらしい。
理由を聞くと、「お金がないって言ってたから、頼ってくれるかなと思って」と言っていた。
でも、貧乏を自覚している男性ほど、
女のほうが自分より貯金を持っていると知ったら、プライドが折れることもある。
知性とプライドがある男なら、なおさらだと思う。
私は、200万円は人を殺すのに十分な金額になり得るから、
そういうことは、持たざる男性には言わないほうがいいと伝えた。
彼女は割り勘でデートして、すぐに体の関係にもなっていた。
それを自由とか対等だと言う人もいるけど、
私には、いつも彼女のほうが先に差し出しているように見えた。
男と寝たあと、
体調を崩して病院に通うこともあり、
そのたびに「彼女が損している」と感じて、悲しくなった。
それは彼女が悪いとか、軽いとかではなく、
いつも“物分かりのいい役”を引き受けているように見えたからだと思う。
しばらく経ってから、
彼女のしていたことは献身的に見えて、
実は支配的だったのかもしれない、と考えるようになった。
自分が「必要とされるポジション」に立ち、
相手が離れられなくなる関係をつくる。
そんなやり方だったのかもしれない。
男性にとっては鬱陶しく、
セフレ関係にはなっても、
恋人としては、選ばれない。
そういうことが何度もあった。
彼女には、得意なことも、与えられるものもあった。
それらは、関係を持った男性の実生活で役に立っていたこともある。
それでも彼女は捨てられたり、
あるいは、自分から離れることを選んでいた。
その後、彼女は結婚した。
初デートで「アロマンティックです」と言ってきた男と同棲し、
「同棲するなら、いつまでに結婚ね」と期限を切って結婚したらしい。
彼女は、顔が整った男性がいいと言っていた。
実際、中性的で綺麗な顔をした人だった。
結婚生活の話を聞くと、
彼女は生活を回す装置みたいになっていた。
ある日、彼女が残業で遅くなったとき、
LINEでカレーの作り方を細かく書いて、作るように頼んだらしい。
帰宅するとカレーはできていたが、米は炊けていなかった。
指示されないと、何も動かない人だった。
彼女の結婚式で配られた、雑誌風の式次第に書かれていた
「お互いの好きなところ」が、妙に印象に残っている。
彼女は、夫の「顔」。
夫は、彼女の「知識」。
そういえば、彼女は
「指輪を買ってもらえなかったこと、一生恨んでる」
と言っていた。
でも、ずっと割り勘で関係を築いてきた相手が、
結婚のタイミングだけ突然「象徴的なお金」を差し出すとは、
私にはどうしても思えなかった。
割り勘の関係って、平等に見えて、
実は「ここまでは出さない」という線を
お互いに確認し合う関係でもある。
指輪は、愛情というより、
「引き受けます」という意思表示だ。
それを出さない人が、
急に出すわけがない。
その後、彼女は夫との未消化の不満を、
私にぶつけてくるようになった。
私は、そこで距離を置いた。
最後に会ったとき、彼女は
「もうセックスしていない」「恋がしたい」と言っていた。
いまでも、過去に一番好きだった男のSNSを見ているらしい。
彼女は、ずっと物分かりのいい女だった。
たぶん、最後まで。
きっと、世間体を気にして離婚とかしなさそう。
それが彼女の修羅道だと気づかないままでいられることを、私は願っている。
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