大学2年生の時、1人で南フランスに滞在した。
ニースは賃料が高いので、そこからバスで40分の誰も知らないようなところで宿を借りた。
その滞在中に日本語ができるフランス人男性と知り合った。よく一緒に出かけるようになり、キスをするくらいには少し親密になった。向こうが私のことを好きになってしまったらしい。
だけど私は全く好きじゃなかった。夏のアバンチュールってやつかなって思って、交際みたいなのしたけど、長く続ける気持ちなんて全くなかった。
私が帰国しても長文のメールのやりとりやスカイプでビデオ通話もしてた。
だけどめんどくさくなったから、ちょうどその時、父方の祖父が亡くなり、そういう気分じゃないからもう交際はできないって伝えた。
別れはすんなりしてた。
でもその後、彼は日本に移住した。
その年のクリスマス、彼から小包が届いた。
成田空港から送られたのがわかる消印が押してあった。たぶんクリスマスに一時帰国する際に送ったのだろう。空港で飛行機に乗るときって自分のことでいっぱいなのに、そこから送ってくるのも不気味だった。
品名にはジャムって書かれてた。
開けてみると、DiorのJ’adore っていう香水が入ってた。
全然連絡も取っていないのに、このプレゼントと成田から送ってくるなんて、少し執着があるなって感じて、お礼のメッセージを送ったけど、お返しは送らなかった。そして、もうクリスマスプレゼントは気を使うから送らないで欲しいと伝えた。
それなのに、また次の年もクリスマスにプレゼントが届いた。
大きなタッパーくらいの箱に5cmくらいの木製のスナフキンの人形がコロンと入っていた。
私はスナフキンは好きじゃないし、好きだなんて一言も話していないのに。
なんだか怖かった。
またメッセージした。お礼と、もう本当にやめて欲しい、と言う事を。
彼は友達みんなにやってるから気にしないでって言ってきたけど、やめてほしいと言った。
ちなみにクリスマスのかなり前に何度か連絡は取っていて、会いたいって言われたけど、彼氏が嫉妬するからごめんねって断ったし、彼には彼女がいるようだった。
そして日本語でメッセージしてたんだけど、
日本語が全然上手くなっていなかったので、
彼女日本人で日本語しかできないのに、あなた日本語全然上手くなってないねって言った。
なぜなら私がまだ仏語ビギナーのときに、
きみのフランス語はまだ下手くそって言われたことがあったから。すごくすっきりした。
スナフキン以降、彼から連絡もプレゼントも来てないし、FBのフレンドはブロックされたみたいだった。
そういえば、私たちのデートはいつも割り勘だった。
彼は、飲み物を買ってくれることもなかったし、
私が何かを差し出すこともなかった。
それ自体が悪いとは思っていなかった。
私は本気で付き合う気もなかったし、
お金も気持ちも、過剰にやり取りする関係にしたくなかったから。
ただ今思えば、
彼は「その場で何かを渡す」ことが、極端に苦手な人だったのだと思う。
ただ、彼が何も与えなかったわけではない。
私が「カレー食べたい」と言うと、
彼は自分の家でカレーを作ってくれることがあった。
買ってくれるわけでも、外で奢るわけでもない。
あくまで「自分の空間」で、「自分の手」で。
そのカレーは、おいしかった。日本のルーでラム肉で作ってくれた。
でもそれは、生活の中の世話というより、
彼の世界に私を招き入れる行為に近かった気がする。
彼は、
外の世界では何も差し出さない代わりに、
自分の領域に入ったときだけ、与える人だった。
目の前の暑さや喉の渇きには関与しないのに、
時間と距離が空いたあと、
空港から香水を送る。
彼の好意は、
いつも現実から一拍遅れて届いた。
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