ある文筆家の知り合いが「幽体離脱できる友人」を持っていた。
その人自身は神や幽霊を信じていない。でも信じている人の信仰心や語る言葉は、できるだけ否定しないようにしているという。
ある日、その幽体離脱できる友人と話していて、軽い気持ちで「じゃあ、俺の部屋に幽体離脱で来てよ」と言ってみたらしい。
数日後、その友人と再会すると、こんなことを言われた。
「昨日、幽体離脱してお前の部屋に行ったよ。
棚、組み立ててたでしょ?」
たしかにその夜、彼は通販で届いた棚を組み立てていた。誰にも言っていなかったし、SNSにも載せていない。ただ黙々とネジを締めていたはずなのに。
「信じてない」と言いながら、
この話をする時の彼の表情は、
少しだけ真顔になっていた。
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