熱海か伊豆の方だったと思う。
家族で一緒に出かけてて、どこかドライブインのような場所で休憩した。
お店はやってなかったけど、駐車場のトイレだけは使えたので、母と私は女子トイレへ。
父と兄は車に戻って行った。
私と母は、それぞれ別の個室に入って用を足していた。
そのときだった。
「おかあさん?」
兄の声がした。
間違いようもない、いつもの兄の声で、すぐそばから聞こえた。
でも母は返事をしなかった。
母はそのとき、何かがおかしいと直感していたらしい。
だから、声がしても反応しなかった。
ただじっと、息を潜めてやり過ごした。
少し間をおいて、個室越しに聞いてきた。
「あんた、今 話しかけた?」
話しかけてない、と答えると、母は黙った。
ふたりでトイレを出て、顔を見合わせた。
「……お兄ちゃんの声、聞こえたよね?」
車に戻って、兄に聞いた。
「トイレまで来て、話しかけた?」
兄は「行ってないよ」ときっぱり答えた。
からかってる風もなかったし、嘘をついていたら必ずネタばらしするタイプの人間だ。
本当に行っていないのだと思う。
私たち以外、その駐車場には誰もいなかった。
あの声だけが、確かに、そこにいた。
<ワタシ的オカルト考察>
「おかあさん?」って、“ただの呼びかけ”のようでいて、
もし母が返事してたら、それは“誰か”に気づいたってことになる。
見えない何かと、無意識に契約しちゃうような。
オカルトの世界では、「問いかけに答えると霊に取り憑かれる」とかよく言うけど、
あれって、呼ばれたら返すのが人間の礼儀だからこそ危ないんだと思う。
つまり、礼儀を逆手に取られてる。
オカルト好きな人ならわかると思うけど、
動物霊とかが人間に悪戯するってよく聞くよね。
この体験は、熱海か伊豆の方で緑が多く、人があんまいないところだったから、動物霊?って思ったんだよね。
でもさ、動物って人間に対してそもそも興味あるかな?って。
虐殺されて祟るっていう昔話もあるけど、恩返ししてくれるパターンのが多くない?
人間より絶対に純粋な生き物な気がする。
そもそも息子の声を真似したら、反応が貰えるかもしれないみたいな人間心理わかるのかな?そんな小賢しい真似してくるなんて、すごい悪意があるなって思った。
母が返事してたらどうなってたんだろう?
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返事はしません。でも、読んだら笑うかも。