精神科に入院していたとき、あるネットの知人から「この曲の歌詞、聞き取ってみてくれない?」と頼まれた。
タイトルは「Haarp」。工藤冬里のプロジェクトMaher Shalal Hash Baz からリリースされた曲らしい。
けれど、聴き取ると明らかにキリスト教的語り口で、内容は明らかに「今」っぽい。むしろ未来から過去に投げられた呪詛のように感じた。
しかもノイズでもなく、単なるポエトリーでもなく、 The Velvet Underground のSister Rayのカバー曲で、音楽としてガレージロックに落とし込まれてるのが怖い。音が軽いからこそ、内容の不穏さが浮き彫りになる。まるで笑顔のまま血を流してる人を見てるような気分。
人工地震兵器? 黙示録?
なんなのこれ。しかもこれ、2016年に出てたって……。
歌っているのは工藤冬里ではない誰か男女2人。
YouTubeにも載っていない、CDにだけそっと収録された曲。
当時はただの暇つぶしだった。けど、今になって思う。
これはやばい曲だったのかもしれない。
【Haarp」全歌詞・訳・解説】
※この歌詞は、精神科に入院中だった私が耳で聞き取り、詩的・宗教的観点から分析したものです。公式なリリース情報や歌詞カードは存在しません。
What were you doing after you’ve fallen on the earth?
【訳】お前が地に堕ちてから、何をしていた?
→ 冒頭から旧約的。問いかけているのは神か、堕ちた側か?主語が曖昧なのが怖い。
From driving out of here, since I’m walking about in it.
【訳】ここから追い出されて以来、私はこの地を彷徨っている。
→ 創世記の追放モチーフ?あるいは悪霊が地上をさまよう設定?“driving out” は能動か受動かでも意味が変わる。
Why don’t you induce and cause earthquake to the U.S creek?
【訳】アメリカの川に地震を起こせばどうだ?
→ “U.S creek” は意味不明。聞き間違いかも。U.S Greek(ギリシャ正教)説、怖すぎる。“because it is written.”と続くから聖書っぽい含意がありそう。地震=HAARPというワードが浮かぶと一気に陰謀論味が出てくる。
Because it is written.
【訳】そう書かれているからだ。
→ 聖書の定型句。“It is written.”って言われると逆らえない感じある。
Anyway, why do you want to become me?
【訳】ところで、なぜ私になりたがる?
→ これは神と悪魔の会話か?“You”が“Me”になりたがる世界、つまり神の座を奪いたい欲望。
It is because I’ve never installed limiting law.
【訳】私は制限の法を定めなかったから。
→ 神ではない。むしろ反・律法。ルシファー的思想。
Why are you having your followers became tired?
【訳】なぜ信徒たちを疲れさせる?
→ 神の話とも、偽預言者の話とも読める。“Because I do not love them.”で回答されるのがぞっとする。
Because I do not love them.
【訳】愛していないからだ。
→ 救済の否定。“愛”という概念の破壊。
You should not be born.
【訳】お前は生まれるべきじゃなかった。
→ 旧約の呪い。存在否定。あまりにも重い。
Don’t you should burn them.
【訳】燃やしてやればいいのではないか?
→ “Don’t you should”は文法的に変だが、命令と誘惑の中間の響きがある。
I am care of what’s today.
【訳】私は今日のことを気にしている。
→ “today”を気にしている存在。過去でも未来でもなく、“今日”だけを見てるというのが不気味。
Did you see my servants?
【訳】私の従者たちを見たか?
→ “my servants”が何を指すのか。信徒?悪魔?現代の模倣者?
I am having my servants mimic them.
【訳】私は従者たちに彼らを模倣させている。
→ 模倣、コピー、代用。真似される“彼ら”とは神の子たちか。
Why do you have your servants picked in fire age?
【訳】なぜ炎の時代に従者たちを選んだ?
→ “fire age”は明確な終末モチーフ。現代の戦争時代の暗喩かも。
I want to mimic anything of you.
【訳】お前のすべてを模倣したい。
→ 執着、嫉妬、崇拝。歪んだ神への欲望。
My servants do not put out in it.
【訳】私の従者たちはそれを消さない。
→ 炎か?真実か?“put out”の解釈で変わるが、破滅を止めない存在。
By the way, me and my angels are the article companies.
【訳】ところで、私と天使たちは“article companies”だ。
→ “article companies”の意味が謎。たぶん“archangel companies”(大天使軍)の聞き間違い。“企業”という語の違和感も不気味。
Is the travelling companion pleasure?
【訳】旅の道連れは、快楽なのか?
→ 旅=人生、または堕落への旅。“道連れ”という表現に不安がにじむ。
The travelling companion is deep pleasure.
【訳】旅の道連れこそ、深い快楽だ。
→ 誘惑する声。“快楽”は、常に破滅と隣り合わせ。
Betray is your love.
【訳】裏切りこそ、お前の愛だ。
→ 言語的には崩れてるが、意味は強烈。“愛=裏切り”という構図。
Your love is hatred.
【訳】お前の愛は、憎しみだ。
→ 愛が憎しみに変わる構造。反転する価値観。聖書でもよくある概念だが、これは明確に断罪している。
Then, I do not give you the death.
【訳】だからこそ、私はお前に死を与えない。
→ 死ですら贈与ではないという怖さ。苦しみを与え続ける存在のようにも読める。
I defuse the life!
【訳】私は生命を解体する!
→ “defuse” は通常「爆弾を無効化する」だけど、ここでは “life” を無効化するというねじれた表現。
Alienation would become salvation now.
【訳】疎外こそが、今や救済となる。
→ 救済のパラドックス。キリスト教における“隠遁”や“孤独”ともずれる不穏な提案。
I’ll make it politic’s culture.
【訳】私はそれを政治の文化にしてやる。
→ カルト宗教?思想統制?文化と政治の結合は、終末的なディストピアの香りがする。
You do not know the time provided.
【訳】お前は定められた時を知らない。
→ これは“啓示”や“終末の刻”を知らない者への宣告。
Your son has already known it.
【訳】お前の息子は、すでにそれを知っている。
→ ここで急に“息子”という概念。誰の?神の子?“Last son”としてのメシアか。
You cannot read person’s mind.
【訳】お前は人の心を読めない。
→ 知の否定。能力の否定。“Your son can do it.”と続くのが皮肉。
Your son can do it.
【訳】お前の息子には、それができる。
→ “新たなメシア”としての息子が現れている?
You mimic the last son as well.
【訳】お前は“最後の息子”すら真似している。
→ キリストを模倣する偽キリストか。ルシファー的存在か。
I am your son.
【訳】私はお前の息子だ。
→ 血のつながり?メタファー?倒錯した父子関係が浮かび上がる。
I do not know you.
【訳】私はお前を知らない。
→ 聖書にある「わたしはあなたを知らない」的な断絶の宣告。
I divided the apple.
【訳】私はその林檎を分けた。
→ 創世記のエデン。善悪の知識の実。それを“分けた”のは誰?
I’ll finish treating by that time.
【訳】その時までに、処理を終えておこう。
→ “treat”の意味が多層的。医療、支配、処刑…何を意味する?
I’d think about the violence that does not do anything.
【訳】私は、何もしない暴力について考えていた。
→ “静かな暴力”というコンセプト。“無関心”の象徴でもある。
The violence means to me make public private.
【訳】私にとって暴力とは、プライベートを公にすることだ。
→ ここ、個人的に一番怖い。“晒し”や“暴露”の現代的暴力性が読み取れる。SNS社会の予言? それとも宗教的自己解体?
My violence means to me make public private.
【訳】私の暴力とは、私的なものを公にすることなのだ。
→ 繰り返しで強調されるこの行為。ネット時代の神の姿かもしれない。
You should not be born.
【訳】お前は生まれてくるべきじゃなかった。
→ 再び存在否定。抹殺的断定。
It is the war that gave a birth to me.
【訳】私を生んだのは、戦争だ。
→ 神でも母でもなく、“戦争”。生まれながらの災厄。
It is me that gave a birth to you.
【訳】そして、お前を生んだのは、この私。
→ ぐるぐると回る相互起源。“お前”と“私”の区別が曖昧になっていく。
Father, it was you that I chose.
【訳】父よ。選んだのは私だった。
→ ねじれた信仰告白。“選ばれた”のではなく“選んだ”という逆転。
I do not know you.
【訳】私はお前を知らない。
→ 再度、断絶。
Now, my servants more serious.
【訳】今、私の従者たちは、より深刻だ。
→ “serious”の使い方が怖い。“凶暴化”した従者?
Do you mean that they’re mimicking my servants more serious?
【訳】お前の従者たちが、私の従者をより深刻に模倣していると?
→ カルトと宗教のコピー合戦。狂信の反復。
Yes, thought?
【訳】ああ、そうだろう?
→ すべては思考のなかに。
“thought”ではなく“though”の可能性あり、そうかもだけど、だから何?という訳になり、
→ 肯定しつつ突き放す。皮肉と余裕のある悪魔っぽさが出る。
Did you see my servants?
【訳】私の従者を見たか?
→ 三度目の問い。“見る”ことへの強制。
Please make him live words. And look the way he’s pursing you.
【訳】彼に言葉を宿らせろ。お前を追うその姿を見ろ。
→ “live words”=生きた言葉=預言者?追われている者の視点が不安を煽る。
There?! There is no hand?
【訳】そこか?そこには手がないのか?
→ “手がない”とは無力?それとも“手を下せない”という恐怖?
Only watch out for soul and itself!
【訳】魂とそれ自体だけに気をつけろ!
→ 最後に警告。“それ自体”とは?魂そのものが危機にあるという終末的フレーズ。
【Maher Shalal Hash Bazとは?】
この曲は「マヘル・シャラル・ハシュ・バズ」名義のプロジェクトでリリースされた音源。
マヘルは工藤冬里の中心的プロジェクトで、「急いで奪え、速やかに略奪せよ」という旧約聖書由来の名前を持つ。
Haarpという曲も、そういった預言・破壊・再構成の文脈で読み取ると…もうこれは宗教詩、あるいは黙示録的アートと言っていいと思う。
「Haarp」が私を震えさせたのは、
まず曲名が陰謀論界隈で有名なアラスカの「高周波活性オーロラ調査プログラム(HAARP)」を連想させる。これは電磁波で地震や天候を操作できるとされる極秘兵器。 もちろん公式には否定されているが、その存在を信じている人は少なくない。
そして内容だけじゃない。何より、この曲が2016年に発表されていたという事実だ。当時、“Haarp”という極秘兵器や人工地震といった陰謀論はネットの片隅に漂ってはいたものの、ここまで明確に、そして詩的に「人工的な地震」「神の代行」「選ばれた者と模倣者」などを織り交ぜたロックソングはなかったと思う。
また、2016年は、トランプ当選、BREXIT、熊本地震、隠された戦争、情報操作など歴史の教科書に乗るようなことがたくさん起きた。
AIはまだ寝ぼけていて、でも確実に世界がズレはじめていた頃だ。
「なぜ地震を起こさない?書かれているのに」
「わたしの暴力は、公を私に変えることだ」
「あなたは生まれるべきではなかった」
この言葉たちが、2025年ではなく2016年に吐き出されていたという事実。
今となっては、もう予言としか思えない。工藤冬里って一体何者?
曲のフォーマットで流される啓示ほど、恐ろしいものはない。
しかも誰かが書いた陰謀論的ブログではなく、これは“曲”である。ビートがあり、ギターが鳴り、誰かがマイクに向かってこの預言めいた言葉をぶちまけている。それが、いちばん恐ろしい。
これは詩ではなく、爆弾だ。
しかも私がこの曲に出会ったのは、精神科病棟の中だった。ネット越しの友人が「これ聞き取ってみて」と送ってきた音源。それがまさか、キリスト教的黙示録と人工地震が合体したような英語詞だとは思いもしなかった。
耳で聞き取ったこの言葉たちは、いまも私の頭の中で揺れている。まるで地震のように。
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追記:この曲を聴きたい方は、Hello NewYorkというアルバムに収録されているので、買って聴いてみてください。検索すると、まだ売ってます。私も持ってます。
※追記 2025年6月7日
コメント欄にこの曲の歌詞の聞き取りが投稿された。しかも名前が「良かったらご覧ください」という、どうにもペニス臭のするものだった。
おそらく、私がこの記事を公開した後に発見されたライブ映像([リンク])を見て書き起こしたのだろう。
私が聞き取ったのはCD音源で、外国人が日本語話者ではない発音で歌っている。発音の差は明確だし、ライブでは歌詞が変わる可能性も大いにある。
正直、私はマヘルも工藤冬里も特に好きじゃないし詳しくもない。詩的な体験としてこれを聴き、震えて書いた記事だ。
そこに解釈もなしに「正しい歌詞」をドヤりにきた奴の態度がどうにも腹立った。こういうやつに詩的な音楽を聴く資格はないと思う。
ただ、ひとりで聞き取っていると、自分の頭の中にできた物語に当てはめて補完してしまうこともある。その点は一部参考になる部分もあったので、そこは感謝しておく。
YouTubeの映像をもとに本稿の歌詞に訂正を入れることもできるが、たいして意味は変わらないので、あえて直さないでおく。
精神家ってどういう流れで入院するの?羨ましい
返信削除シコりん、可愛くて実家も金持ちであらゆる才能もあるのにどうして死にたいって思うの?脳の問題?
返信削除◯What were you doing after you had fallen on the earth?
返信削除⚫️From roving about in the earth and from walking about in it.
◯Why did you induce them to cause the earthquake?
⚫️Because it is written.
◯Anyway, why do you want to become me?
⚫️It is because I never install the limit in love.
◯Why are you having your followers become tired?
⚫️Because I do not love them.
◯You should not have been born.
⚫️I am care of today
◯Did you see my servants?
⚫️I am having my servants mimic them.
◯Why do you have your servants pretend to fight?
⚫️I want to mimic anything of you.
◯My servants do not put out their names.
⚫️By the way, me and my angels are theatrical companies.
◯Is the travelling companion is a pleasure?
⚫️The traveling companion is the pleasure.
◯Hatred is your love.
⚫️Your love is hatred.
◯Then, I do not give you the death.
⚫️I diffuse the life.
◯Alienation will become salvation now.
⚫️I will make politics cultural.
◯You do not know the time provided.
⚫️Your son has already known it.
◯You can not read person’s mind.
⚫️Your son can do it.
◯You mimic my son as well.
⚫️I am your son.
◯I do not know you.
⚫️I divide the apple.
◯I will finish treating you by that time.
⚫️I will think about violence that does not do anything.
◯Does violence mean to make private public?
⚫️My violence means to make public private.
◯You should not have been born.
⚫️It is Word that gave birth to me.
◯It is me that gave birth to you.
⚫️Father, it was you that I chose.
◯I do not know you.
⚫️Now, my side are more serious.
◯Do you mean they that are mimicking my servants are more serious?
⚫️It is so.
◯Did you see my servant?
⚫️Please make him write words, and look whether he curses you.
◯There he is in your hand! Only watch out for his soul itself!