不眠が続いて一週間眠れなくなり、ついつい薬をたくさん飲んでしまったからだ。
起きたら病院のベッドの上で目がチカチカした。医者によるとすぐ退院してもいいけど、入院してみた方がいいと言われた。
精神科には一度もかかったことがなかったし、今まで入院なんてしたことなかったので、怖かった。ただ、主治医が ここは都会の病院だからマイルドな患者しかいない と説明してくれたので、不眠や元々おかしいと自分で自覚していた部分と向き合うために入院することにした。
入院生活は割と楽しくて、ご飯も美味しいし、 スタバ行ってきます と看護師さんに告げると、ある程度自由に外出できるので、ネットで見るようなお終いの地みたいな場所ではなかった。
毎週決まった曜日にはデイルームでレクリエーションが開催されて、暇だったので積極的に参加した。
デイルームでの七夕祭りの一枚
入院生活の長い患者は友達同士のように親しくしている人もいたけれど、ほとんどの人は皆それぞれのパーソナルスペースが広い人が多かった。
それと、レクリエーションではすごくおしゃべりだけど、廊下ですれ違うと全く知らない人みたいな感じになる人が多かった。
ただ一人、レクで同い年くらいの感じのいい男の子がいて、その子とは廊下で何回か挨拶するうちに一緒に病院の中をウロウロするようになった。
話し方も朗らかな感じで、精神病とは思えない好青年だったので、失礼かもしれないけど、なんで入院しているのか聞いたら、全ての触覚が痛みと認識される病気で、一応精神病の括りなので入院していると言っていた。
大変そうな病気だなぁと思ったけれど、私はオナニーするときどうなんだろ・・・とか考えてた。
私は精神科の長い廊下を歩いているとき、誰かと目があったら、必ず会釈かこんにちはと挨拶をしていた。ほとんどの人は無視だったけれど、挨拶を返してくれるおじさんがいて、ある日、急に待ってと呼び止められて、キットカットをくれた。
おじさん曰く、廊下ですれ違って挨拶できる人はまだ思考回路がちゃんと繋がっている奴らしく、コミュニケーション可能の普通の人間らしい。
そんなおじさんは私に 君どこも悪そうなじゃないけど、本当に病気なの? と聞かれたから、ここにきてしまった理由を伝え、 あなたこそどうなんですか と尋ねた。
おじさんはもともと他の病気があって、精神を少し病んでしまったらしい。
それで幻聴が聞こえるらしく、シャワーを浴びたりすると、水の音が別の音声になるらしかった。
何が聞こえるんですか、と聞いたら、あの童謡、森のくまさんが聞こえると言っていた。
最初は監視カメラのついた二人部屋にいたけれど、入院して二週間後は6人部屋に移った。
私が退院するとき、先に退院してしまった同じ趣味の女の人ひとり以外、同室の患者とは全然話したりしなかったのに、みんなカーテンを開けて、退院おめでとうございます。と言ってくれた。
まるで三途の川を間違えて渡ってしまって、虚な魂たちに追い返されて、目が覚めたような気分になった。
そして私は今日も元気にやっています。
1 件のコメント:
なかなか面白い体験ですね。
是非歌にしてください。
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