2025/08/10

オカルト特集No.8| あの席に、光の男の子がいた。

親と一緒に参加したツアー旅行で、添乗員の女性と仲良くなったことがある。

柔らかくて、声のトーンも表情も、ぜんぶ「安心」をかたどったような人だった。

話しているうちに、その人はふと、こんなことを言った。


「…実は、ちょっとだけ“視える”んです」


彼女は、映画『ゴースト/ニューヨークの幻』を見たとき、

あの映画を作った人は、本当に幽霊が見える人なんじゃないかって思っているそうだ。


あるとき、彼女が担当したツアーに、

10歳くらいの男の子を亡くしたことがあるお客さんが参加していたことがあった。


そのお客さんに、バスの中でふと目を向けたら──


隣の席に、透けるような光を纏った男の子が座っていたという。


消えそうな輪郭。でも、そこに確かに「在る」気配。

その姿を見たとき、彼女はもう我慢できなかった。


ツアーの終わりに、こっそり手紙を書いた。

あなたの息子さん、きっとずっと、近くで見守ってくれていますよ──と。


それが正しかったかは分からないけど、

「言わずにいられなかった」と、彼女は言った。


そのあと私は、彼女の「見える」という話が、ただの“ホワホワ話”には思えなくなった。

ほんの一瞬の残像みたいな、やさしいオカルト。

この世とあの世の距離が、少しだけ近づいた日の話。

2025/08/09

オカルト特集No.7| 左近川に現れた三角列隊で泳ぐ変な魚たち

子供の頃、私は見てはいけないものを見た気がしている。

それは「幻覚」ではなかったと思いたいし、母もそう言ってくれた。

でも、いまだに正体はわからない。


小学生のとき、葛西あたりにある左近川という川沿いを父と2人で歩いていた。

その日以外にも数回行ったことがあったが、釣りをしている大人もいたりするが、いわゆる「綺麗な川」ではなかった。

岩場にはザリガニ、橋の下にはフナムシ。海が近いためか、どこか湿った生気が漂っていた。


ある日、川を覗いた私は、それを見つけた。

黄色と黒の縞模様を持つ、見知らぬ魚の群れ。


サイズは小魚程度。

しかし、泳ぎ方が奇妙だった。群れは一匹の魚を先頭に、綺麗な三角形を描いていた。

列の乱れもなく、ぬるり、すいすいと、まるで軍隊のように水面を滑っていく。

質感は魚というより、両生類に近かった。ぬめりのある皮膚。

サメのような背びれもなく、金魚のように体をくねらせながら進んでいた。

だが、色が異様だった。

工事現場のバリケードのような黄色と黒の警戒色。

自然の中で見るには、あまりにも不自然で、毒々しくて、美しかった。


私は、父を呼ぼうとした。父は魚に詳しかったし、「見て」と言えば何か言ってくれると思った。

でも、その一瞬の間に――すべての魚が消えた。


まるで、こっちが声をかけるのを待っていたみたいだった。

こっちを見ていたのかもしれない、と今になって思う。

でもあのとき、私はただ川を見ていただけなのだ。

観察していたつもりが、観察されていたのかもしれない。


あとから父に話しても、「光の加減じゃない?」と笑っていた。

けれど、曇り空だった。寒い季節で、私は長袖にタイツを履いていた。

夏ではない。陽炎も光も揺れていなかった。


インターネットで調べても、あの形状も、色も、群れ方も一致する魚は見つからない。

だから私は、もしかして**UMA(未確認生物)**だったのかと半ば冗談交じりに考えるようになった。

それでも絵に描いたこともあるくらい、鮮明に覚えている。

なぜか怖かった。

見た目の毒々しさだけじゃなく、異様な気配を感じた気がした。


今思うと、子供の特有の幻覚?とも思う。


私がこの変な魚を見たのは、小学校の低学年の頃だったと思う。

たしかに川をのぞきこんだのは自分の意思だったけれど、あの「列」は、どう考えても私の想像の外側にあった。

黄色と黒の毒々しい色の小さな魚たちが、なぜか“先頭”を決めて、きれいな三角形を保ちながらすいすいと泳いでいく。

それはまるで、軍隊か、どこか異世界のルールで動いている生き物のようだった。

私はピンクとリボンが好きな子どもだったし、あの列隊は私の“おとぎ話”のなかにはいなかった。

それは“夢の延長”ではなく、“現実の裂け目”から漏れた、誰かの世界だったのかもしれない。


UMAってネッシーとかビッグフットとか大きな生物が多いけど、もしかして、意外と地味なものもいるのかもしれない。


誰か、同じようなものを見た人はいないだろうか。

川で、黄色と黒の魚のような生き物を。

三角列隊で泳ぐ、不自然な美しさを。

私はずっと、この記憶に名前をつけられずにいる。

2025/08/08

オカルト特集No.6| 連れ去られたくて、見上げていた

浦安から都内に帰る道を父の運転で車で走っていた。

大きい道路はそこそこ混んでいて、車はゆっくり進んでいた。


ふと父が

「なんだあれ?」

って空を指さした。


空がうっすらピンク色に染まっていて、ちょうど日が落ちる寸前だったと思う。

飛行機じゃない。雲でもない。

ひとつ、銀色のダイヤモンド型の物体が、空に浮かんでいた。


今でいうと、ドローンの様に一点に止まって浮遊していた。

当時はドローンなんかなかったと思うし、明らかにヘリコプターでもない。


しかもその謎の浮遊物体は回転しながら、浮遊していた。

ちょっとだけ光っていて、でも音はしない。

不思議と怖くなかった。むしろ、きれいだな、と思った。

で、母がフィルムのファミリーカメラ(当時の主流)で撮ろうとしたら、

いつの間にか消えた。

フェードアウトじゃない。

まるで誰かがリモコンの「オフ」ボタンを押したように、パッと。


一緒にいた両親もそれを見ていた。

「あれUFOじゃない?!」

という話になった。


いまでも覚えている。あれは、家族の間で共有された、確かな“異物”だった。


子供の頃の記憶だから確かではないけど、

サイズ感はリトルグレイなどの宇宙人でも搭乗できなさそうだった。

たぶん無人偵察機だと思う。


もしかしたら、ステルスモードが壊れていたのかもしれない。

あんなに堂々と姿を現すなんて、何かの事故だったんじゃないか。

あるいは、ほんとうに「見せたかった」のかもしれない。


正直に言うと、

私はちょっと――攫ってほしかった。

できれば高待遇で。


異星のテクノロジーで一生ナイスボディにされて、

脳内チップで全世界の言語対応。

ぶっちゃけ顔は気に入ってるからいじらなくていいけど、

テレパシーでエロい会話ができる宇宙人の完璧なハズバンドが欲しい。


たまに思考に流れ込んできてほしい。

「今夜、迎えに行くよ」みたいな。

そうやって日常のスキマに介入してきて、

一度くらい連れてってくれてもいいんじゃないか、って本気で思ってる。


実際、私は信じてる。

だって消え方が「人間の技術じゃない」って感じだったし、

いままで何万回空を見上げて、あんな風に消えたものなんて一度も見たことがない。

それにUFO特集でもあんな形の飛行物体見たことない。


あれは、来てたんだと思う。

ちょっとだけ見せに。

もしかしたら“選ばれた”つもりになってほしくて。

あるいは、

ほんとうに選んでたのかもしれない。